ろよろ》して、しなやかな姿を揉《も》み、しばらく争っているようでありました。けれども、また、颯《さっ》と駈け出して、あわやという中《うち》に影も形も見失ったのでありまする。
 処へ、かの魚津の沖の名物としてありまする、蜃気楼《しんきろう》の中の小屋のようなのが一軒、月夜に灯《ともし》も見えず、前途に朦朧《もうろう》として顕《あらわ》れました。
 小宮山は三蔵法師を攫《さら》われた悟空という格で、きょろきょろと四辺《あたり》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》しておりましたが、頂は遠く、四辺《あたり》は曠野《こうや》、たとえ蝙蝠の翼に乗っても、虚空へ飛び上る法ではあるまい、瞬《またたき》一つしきらぬ中《うち》、お雪の姿を隠したは、この家の内に相違ないぞ、這奴《こやつ》! 小川山《しょうせんざん》の妖怪ござんなれと、右から左へ、左から右へ取って返して、小宮山はこの家の周囲《まわり》をぐるぐると廻って窺《うかが》いましたが、あえて要害を見るには当らぬ。何の蝸牛《ででむし》みたような住居《すまい》だ、この中に踏み込んで、罷《まか》り違えば、殻を背負《しょ》っても逃げられると、
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