《おみなえし》が、無慙《むざん》や風に吹き乱されて、お雪はむッくと起上りましたのでありまする。小宮山は論が無い、我を忘れて後《しりえ》に※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と坐りました。
 蝙蝠は飜《ひるがえ》って、向側の障子の隙間から、ひらひらと出たと思うと、お雪が後に跟《つ》いてずっと。
 蚊帳を出《い》でてまだ障子あり夏の月、雨戸を開けるでもなく、ただ風の入るばかりの隙間から、体がすっと細くなり、水に映《う》つる柳の蔭の隠れたように、ふと外へ出て見えなくなりましたと申しますな。勿論、蝙蝠に引出されたんで。

       十五

 小宮山は切歯《はがみ》をなして、我|赤樫《あかがし》を割って八角に削りなし、鉄の輪十六を嵌《は》めたる棒を携え、彦四郎定宗《ひこしろうさだむね》の刀を帯びず、三池の伝太|光世《みつよ》が差添《さしぞえ》を前半《まえはん》に手挟《たばさ》まずといえども、男子だ、しかも江戸ッ児だ、一旦請合った女をむざむざ魔に取られてなるものかと、追駈《おっか》けざまに足踏をしたのでありまする。あいにく神通がないので、これは当然《あたりまえ》に障子を開け、
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