と二つばかり、合点々々を致したのでございますよ。
(可《よ》し。)とお神さんが申しますと、怨念はまたさっきのような幅の広い煙となって、それが段々罎の口へ入ってしまいました。
それからでございますが。」
とお雪は打戦《うちわなな》いて、しばらくは口も利けません様子。
十一
さてその時お雪が話しましたのでは、何でもその孤家《ひとつや》の不思議な女が、件《くだん》の嫉妬で死んだ怨霊の胸を発《あば》いて抜取ったという肋骨《あばらぼね》を持って前《ぜん》申しまする通り、釘だの縄だのに、呪《のろ》われて、動くこともなりませんで、病み衰えておりますお雪を、手ともいわず、胸、肩、背ともいわず、びしびしと打ちのめして、
(さあどうだ、お前、男を思い切るか、それを思い切りさえすれば復《なお》る病気じゃないか、どうだ、さあこれでも言う事を聞かないか、薬は利かないか。)
と責めますのだそうでありまする、その苦しさが耐えられませぬ処から、
(御免なさいまし、御免なさいまし、思い切ります。)
と息の下で詫びまする。それでは帰してやると言う、お雪はいつの間にか旧《もと》の閨《ねや》に帰っ
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