化粧の名残
二十四
「とうとうお前《めえ》、旗本の遊女《おいらん》が惚《ほ》れた男の血筋を、一人紅梅屋敷へ引込んだ、同一《おなじ》理窟で、お若さんが、さ、さ、先刻《さっき》取り上げられた剃刀《かみそり》でやっぱり、お前、とても身分違いで思《おもい》が叶《かな》わぬとッて、そ、その男を殺すというのだい。今行水を遣《つか》ってら、」
「何をいわっしゃる、ははははは、風邪を引くぞ、うむ、夢じゃわ夢じゃわ。」
「はて、しかし夢か、」とぼんやりして腕を組んだが、
「待てよ、こうだによってと、誰か先刻《さっき》ここの前へ来て二上屋の寮を聞いたものはねえか。」
「おお、」
作平も膝を叩いた。
「そういやあある。お前《めえ》は酔っぱらってぐうぐうじゃ、何かまじまじとして私《わし》あ寐《ね》られん、一時《いっとき》半ばかり前に、恐しく風が吹いた中で、確《たしか》に聞いた、しかも少《わか》い男の声よ。」
「それだそれだ、まさしくそれだ、や、飛んだこッた。
お前《めえ》、何でも遊女《おいらん》に剃刀を授かって、お若さんが、殺してしまうと、身だしなみのためか、行水を、お前、
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