全くそう。」

       十九

「しかし土手下で雪に道を遮られて帰る途《みち》さえ分らなくなった時思出して、ああ、あれを頂いて持っていたら、こんな出来事が無かったのかも知れない。考えて見ればいくら叔母だって、わざわざ伊予紋まで鏡を持《もた》して寄越《よこ》すってことは容易でない。それを持して寄越したのも何かの前兆、私が受取らないで女の先生を帰したのも、腕車《くるま》の破《こわ》れたのも、車夫に間違えられたのも、来よう筈《はず》のない、芳原近くへ来る約束になっていたのかも知れないと、くだらないことだが、悚《ぞっ》としたんだね。
 もっとも、その時だって、天窓《あたま》からけなして受けなかったのじゃあない、懐へでも入れば受取ったんだけれども、」
 我が胸のあたりをさしのぞくがごとくにして、
「こんな扮装《いでたち》だから困ったろうじゃありませんか。
 叔母には受取ったということに繕って、密《そっ》と貴女《あなた》から四ツ谷の方へ届けておいて下さいッて、頼んだもんだから、少《わか》い夜会結《やかいむすび》のその先生は、不心服なようだッけ、それでは、腕車で直ぐ、お宅の方へ、と謂って帰っち
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