でかい。」
「あれ、」と低声《こごえ》に年増《としま》が制して、門《かど》なる方《かた》を憚《はばか》る気勢《けはい》。
「可《よ》かったら開けて下さい、こっちにお知己《ちかづき》の者じゃあないんです、」
「…………」
「この突当《つきあたり》の家《うち》で聞いて来たんですが、紅梅屋敷とかいうのでしょう。」
「はい、あの誰方《どなた》様で、」
「いえ、御存じの者じゃアありませんが、すこし頼まれて来たんです、構いません、ここで言いますから、あのね。」
「お開けよ。」
「…………」
「こっちへさあ。可《い》いわ、」
ここにおいて、
「まあ、お入りなさいまし。」と半ば圧《おさ》えていた格子戸をがらりと開けた。框《かまち》にさし置いた洋燈《ランプ》の光は、ほのぼのと一筋、戸口から雪の中。
同時に身を開いて一足あとへ、体を斜めにする外套《がいとう》を被《き》た人の姿を映して、余《あまり》の明《あかり》は、左手《ゆんで》なる前庭を仕切った袖垣を白く描き、枝を交《まじ》えた紅梅にうつッて、間近なるはその紅《くれない》の莟《つぼみ》を照《てら》した。
けれども、その最もよく明かに且つ美しく照した
前へ
次へ
全88ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング