、やしこばばの唄なんだよ、ひゅうらひゅうら、ツテン、テン、
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やしこばば、うばば、
うば、うば、うばば、
火を一つくれや……」
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と、唄うに連れて、囃子に連れて、少しずつ手足の科《しな》した、三個《みつ》のこの山伏が、腰を入れ、肩を撓《た》め、首を振って、踊出す。太刀、斧、弓矢に似もつかず、手足のこなしは、しなやかなものである。
従七位が、首を廻《まわ》いて、笏《しゃく》を振って、臀《いしき》を廻いた。
二本の幟《のぼり》はたはたと飜り、虚空を落す天狗風。
蜘蛛の囲の虫|晃々《きらきら》と輝いて、鏘然《しょうぜん》、珠玉《たま》の響《ひびき》あり。
「幾干金《いくら》ですか。」
般若の山伏がこう聞いた。その声の艶《えん》に媚《なまめ》かしいのを、神官は怪《あやし》んだが、やがて三人とも仮装を脱いで、裸にして縷無《るな》き雪の膚《はだ》を顕《あらわ》すのを見ると、いずれも、……血色うつくしき、肌理《きめ》細かなる婦人《おんな》である。
「銭《ぜに》ではないよ、みんな裸になれば一反ずつ遣《や》る。」
価《あたい》を問われた時、杢若が
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