》や、襤褸半纏《ぼろばんてん》の漢等《おのこら》、俗に――云う腸《わた》拾いが、出刃庖丁を斜に構えて、この腸《はらわた》を切売する。
待て、我が食通のごときは、これに較ぶれば処女の膳であろう。
要するに、市、町の人は、挙《こぞ》って、手足のない、女の白い胴中《どうなか》を筒切《つつぎり》にして食うらしい。
その皮の水鉄砲。小児《こども》は争って買競《かいきそ》って、手の腥《なまぐさ》いのを厭《いと》いなく、参詣《さんけい》群集の隙《すき》を見ては、シュッ。
「打上げ!」
「流星!」
と花火に擬《まね》て、縦横《たてよこ》や十文字。
いや、隙どころか、件《くだん》の杢若をば侮《あなど》って、その蜘蛛の巣の店を打った。
白玉の露はこれである。
その露の鏤《ちりば》むばかり、蜘蛛の囲に色|籠《こ》めて、いで膚寒《はださむ》き夕《ゆうべ》となんぬ。山から颪《おろ》す風一陣。
はや篝火《かがりび》の夜にこそ。
五
笛も、太鼓も音《ね》を絶えて、ただ御手洗《みたらし》の水の音。寂《しん》としてその夜《よ》更け行く。この宮の境内に、階《きざはし》の方《かた》から、
前へ
次へ
全34ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング