小児二 少しこわいなあ。
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いい次ぎつつ、お沢《さわ》の落葉を掻寄《かきよ》する間《ま》に、少しずつやや退《すさ》る。
[#ここで字下げ終わり]
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小児一 お正月かも知れないぜ。この山まで来たんだ。
小児二 や、お正月は女か。
小児三 知らない。
小児一 狐《きつね》だと大変だなあ。
小児二 そうすりゃこのお菓子なんか、家《うち》へ帰ると、榧《かや》や勝栗だ。
小児三 そんなら可《い》いけれど、皆《みんな》木の葉だ。
女の児たち きゃあ――
男の児たち やあ、転《ころ》ぶない。弱虫やい。――(かくて森蔭《もりかげ》にかくれ去る。)
お沢 (箒を堂の縁下《えんした》に差置き、御手洗《みたらし》にて水を掬《すく》い、鬢《かみ》掻撫《かきな》で、清き半巾《ハンケチ》を袂《たもと》にし、階段の下に、少時《しばし》ぬかずき拝む。静寂。きりきりきり、はたり。何処《どこ》ともなく機織《はたおり》の音聞こゆ。きりきりきり、はたり。――お沢。面《おもて》を上げ、四辺《あたり》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》し耳を澄
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