い》。あの光りにも恥かしい、……私《わたし》の紅《あか》い簪《かんざし》なんぞ。……
神職 御神《おんかみ》、かけまくもかしこき、あやしき御神、このまま生命《いのち》を召さりょうままよ、遊ばされました事すべて、正しき道でござりましょうか――榛貞臣《はしばみさだおみ》、平《ひら》に、平に。……押して伺いたてまつる。
媛神 存じません。
禰宜 ええ、御神《おんかみ》、御神。
媛神 知らない。
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――「平《ひら》に一同、」「一同|偏《ひとえ》に、」「押して伺い奉る、」村人らも異口同音にやや迫りいう――
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巫女 知らぬ、とおっしゃる。
神職 いや、神々の道が知れませいでは、世の中は東西南北を相失いまする。
媛神 廻ってお歩行《ある》きなさいまし、お沢さんをぐるぐると廻したように、ほほほ。そうして、道の返事は――ああ、あすこでしている。あれにお聞き。
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「のりつけほうほう、ほうほう、」――梟《ふくろう》鳴く。
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