が如き一条《ひとすじ》の征矢《そや》を、さし込みにて前簪《まえかんざし》にかざしたるが、瓔珞《ようらく》を取って掛けし襷《たすき》を、片はずしにはずしながら、衝《つ》と廻廊の縁に出《い》づ。凛《りん》として)お前たち、何をする。
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――(一同ものも言い得ず、ぬかずき伏す。少しおくれて、童男《どうだん》と童女《どうじょ》と、ならびに、目一つの怪しきが、唐輪《からわ》と切禿《きりかむろ》にて、前なるは錦《にしき》の袋に鏡を捧げ、後《あと》なるは階《きざはし》を馳《は》せ下《くだ》り、巫女《みこ》の手より梭《ひ》を取り受け、やがて、欄干《らんかん》擬宝珠《ぎぼうしゅ》の左右に控う。媛神、立直《たてなお》りて)――お沢さん、お沢さん。
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巫女 (取次ぐ)お女中《じょちゅう》、可恐《おそろし》い事はないぞな、はばかり多《おお》や、畏《かしこ》けれど、お言葉ぞな、あれへの、おん前《まえ》への。
お沢 はい――はい……
媛神 まだ形代《かたしろ》を確《しっか》り持っておいでだね。手がしびれよう。姥《うば》、預
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