真白い衣《きぬ》を絡《まと》いいる。魔の女め、姿まで調《ととの》えた。あれに(肱《ひじ》長く森を指《さ》す)形代《かたしろ》を礫《はりつけ》にして、釘を打った杉のあたりに、如何《いか》ような可汚《けがらわ》しい可忌《いまいま》しい仕掛《しかけ》があろうも知れぬ。いや、御身《おみ》たち、(村人と禰宜《ねぎ》にいう)この婦《おんな》を案内に引立《ひった》てて、臨場裁断と申すのじゃ。怪しい品々《しなじな》かっぽじって来《こ》られい。証拠の上に、根から詮議《せんぎ》をせねばならぬ。さ、婦、立てい。
禰宜 立とう。
神職 許す許さんはその上じゃ。身は――思う旨《むね》がある。一度社宅から出直す。棚村《たなむら》は、身ととも参れ。――村の人も婦を連れて、引立《ひった》てて――
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村人ら、かつためらい、かつ、そそり立ち、あるいは捜し、手近きを掻取《かきと》って、鍬《くわ》、鋤《すき》の類《たぐい》、熊手、古箒など思い思いに得ものを携う。
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後見 先へ立て、先へ立とう。
禰宜 箒で、そのやきもちの頬《ほお》を敲
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