と皆《みんな》が云うから、私は留めました。
 ここを借りて、一室《ひとま》だけでも広過ぎるから、来てからまだ一度も次の室《ま》は覗《のぞ》いて見ない。こういう時開けては不可《いけ》ません。廊下から、厠《かわや》までは、宵から通った人もある。転倒《てんどう》している最中、どんな拍子で我知らず持って立って、落して来ないとも限らんから、念のため捜したものの、誰も開けない次の室《ま》へ行ってるようでは、何かが秘《かく》したんだろうから、よし有ったにした処で、先方《さき》にもしその気があれば、怪我もさせよう、傷もつけよう。さて無い、となると、やっぱり気が済まんのは同一《おんなじ》道理。押入も覗《のぞ》け、棚も見ろ、天井も捜せ、根太板をはがせ、となっては、何十人でかかった処で、とてもこの構えうち隅々まで隈《くま》なく見尽される訳のものではない。人足の通った、ありそうな処だけで切上げたが可《い》いでしょう――
 それもそうか、いよいよ魔隠しに隠したものなら、山だか川だか、知れたものではない。
 まあ、人間|業《わざ》で叶《かな》わん事に、断念《あきら》めは着きましたが、危険《けんのん》な事には変わり
前へ 次へ
全189ページ中96ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング