と言いかけて偶《ふ》と見返った、次の室《ま》と隔ての襖《ふすま》は、二枚だけ山のように、行燈《あんどう》の左右に峰を分けて、隣国《となりぐに》までは灯が届かぬ。
 心も置かれ、後髪も引かれた状《さま》に、僧は首に気を入れて、ぐっと硬くなって、向直って、
「その怪しいものの方でも、手をかえ、品をかえ、怯《おびや》かす。――何かその……畳がひとりでに持上りますそうでありますが、まったくでございますかな。」
 熟《じっ》と視《み》て聞くと、また俯向《うつむ》いて、
「ですから、お話しも極《きま》りが悪い、取留めのない事だと申すんです。」
「ははあ、」
 と胸を引いて、僧は寛《くつろ》いだ状《さま》に打笑い、
「あるいはそうであろうかにも思いましたよ。では、ただ村のものが可《い》い加減な百物語。その実、嘘説《うそ》なのでございますので?」
「いいえ、それは事実です。畳は上《あが》りますとも。貴僧《あなた》、今にも動くかも分りません。」
「ええ!や、それは、」
 と思わず、膝を辷《すべ》らした手で、はたはたと圧《おさ》えると、爪も立ちそうにない上床《じょうどこ》の固い事。
「これが、動くで
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