より》夫婦で一層のこと気にかかる。
 昼の内は宰八なり、誰か、時々お伺いはいたしますが、この頃は気怯《きおく》れがして、それさえ不沙汰《ぶさた》がちじゃに因って、私によくお見舞い申してくれ、と云う、くれぐれもその託《ことづけ》でございました。が何か、最初の内、貴方《あなた》が御逗留《ごとうりゅう》というのに元気づいて、血気な村の若い者が、三人五人、夜食の惣菜ものの持寄り、一升徳利なんぞ提げて、お話|対手《あいて》、夜伽《よとぎ》はまだ穏《おだやか》な内、やがて、刃物切物、鉄砲持参、手覚えのあるのは、係羂《かけわな》に鼠の天麩羅《てんぷら》を仕掛けて、ぐびぐび飲みながら、夜更けに植込みを狙うなんという事がありますそうで?――
 婆さんが話しました。」
「私は酒はいけず、対手は出来ませんから、皆さんの車座を、よく蚊帳の中から見ては寝ました。一時は随分|賑《にぎやか》でした。
 まあ、入《いり》かわり立《たち》かわり、十日ばかり続いて、三人四人ずつ参りましたが、この頃は、ばったり来なくなりましたんです。」
「と申す事でございますな。ええ、時にその入り交《かわ》り立ち交りにつけて、何か怪しい、
前へ 次へ
全189ページ中87ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング