身うちへ応《こた》えますで、道理こそ、一雨かかったと思いましたが。」
「お冷えなさるようなら、貴僧《あなた》、閉めましょう。」
「いいえ、蚊を疵《きず》にして五百両、夏の夜はこれが千金にも代えられません、かえって陽気の方がお宜《よろ》しい。」
 と顔を見て、
「しかし、いかにもその時はお寂《さみ》しかったでございましょう。」
「実際、貴僧《あなた》、遥々《はるばる》と国を隔てた事を思い染みました。この果《はて》に故郷がある、と昼間三崎街道を通りつつ、考えなかったでもありませんが、場所と時刻だけに、また格別、古里が遠かったんです。」
「失礼ながら、御生国《ごしょうごく》は、」
「豊前《ぶぜん》の小倉《こくら》で、……葉越《はごし》と言います。」
 葉越は姓で、渠《かれ》が名は明である。
「ああ、御遠方じゃ、」
 と更《あらた》めて顔を見る目も、法師は我ながら遥々と海を視《なが》める思いがした。旅の窶《やつれ》が何となく、袖を圧して、その単衣《ひとえ》の縞柄《しまがら》にも顕《あらわ》れていたのであった。
「そして貴僧《あなた》は、」
「これは申後《もうしおく》れました、私《わたくし》は信
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