に》お前様《めえさま》、学校で体操するだ。おたま杓子《じゃくし》で球をすくって、ひるてんの飛《とび》っこをすればちゅッて、手毬なんか突きっこねえ、)と、先生様の前だけんど、私《わし》一ツ威張ったよ。」
「何だ、見《みっ》ともない、ひるてんの飛びっことは。テニスだよ、テニスと言えば可《い》い。」
「かね……私《わし》また西洋の雀躍《すずめおどり》か、と思ったけ、まあ、可《え》え。」
「ちっとも可《よ》かあない、」
と訓導は唾《つば》をする。
「それにしても、奥床しい、誰が突いた毬だろう、と若え方問わっしゃるだが。
のっけから見当はつかねえ、けんど、主《ぬし》が袂《たもと》から滝のように水が出るのを見るにつけても、何とかハイ勘考せねばなんねえで、その手毬を持って見た、」
と黄母衣《きほろ》を一つ揺上《ゆすりあ》げて、
「濡れちゃいねえが、ヒヤリとしたでね、可《い》い塩梅《あんばい》よ、引込《ひっこ》んだのは手棒《てんぼう》の方、」
へへ、とまた独りで可笑《おかし》がり、
「こっちの手で、ハイ海へ落ちさっしゃるお日様と、黒門の森に掛《かか》ったお月様の真中《まんなか》へ、高《たっか》
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