いき》の葉に目口のある、小さいのがふらふら歩行《ある》いて、そのお前様、
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(秋谷邸の細道じゃ、
誰方が見えても……)[#底本では4字下げ]
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でござりましょう。人足《ひとあし》が絶えるとなれば、草が生えるばっかりじゃ。ハテ黒門の別宅は是非に及ばぬ。秋谷邸の本家だけは、人足が絶やしとうないものを、どうした時節か知らぬけれど、鶴谷の寿命が来たのか、と喜十郎様は、かさねがさねおつむりが真白《まっしろ》で。おふくろ様も好《い》いお方、おいとしい事でござります。
おお、おお、つい長話になりまして、そちこち刻限、ああ、可厭《いや》な芋※[#「くさかんむり/更」、160−11]の葉が、唄うて歩行《ある》く時分になりました。」
と姥は四辺《あたり》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》した。浪の色が蒼くなった。
寂然《しん》として、果《はて》は目を瞑《つむ》って聞入った旅僧は、夢ならぬ顔を上げて、葭簀《よしず》から街道の前後《あとさき》を視《なが》めたが、日脚を仰ぐまでもない。
「身に染む話に聞惚《ききと》れて、人通りがもう影法
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