》が五つ出ました。」
「五つ!」
「ええ、ええ、お前様。」
「誰と誰と、ね?」
「はじめがその出養生《でようじょう》の嬢様じゃ。これが産後でおいとしゅうならしった。大騒ぎのすぐあと、七日目に嫁御がお産じゃ。
汐時《しおどき》が二つはずれて、朝六つから夜の四つ時まで、苦しみ通しの難産でのう。
村中は火事場の騒ぎ、御本宅は寂《しん》として、御経の声やら、咳《しわぶき》やら……」
十四
「占者が卦《け》を立てて、こりゃ死霊《しりょう》の祟《たたり》がある。この鬼に負けてはならぬぞ。この方から逆寄《さかよ》せして、別宅のその産屋《うぶや》へ、守刀《まもりがたな》を真先《まっさき》に露払いで乗込めさ、と古袴《ふるばかま》の股立《ももだ》ちを取って、突立上《つッたちあが》りますのに勢《いきおい》づいて、お産婦を褥《しとね》のまま、四隅と両方、六人の手で密《そっ》と舁《か》いて、釣台へ。
お先立ちがその易者殿、御幣《ごへい》を、ト襟へさしたものでござります。筮竹《ぜいちく》の長袋を前《まえ》半じゃ、小刀のように挟んで、馬乗提灯《うまのりぢょうちん》の古びたのに算木を顕《あらわ
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