なく流行《はや》りますので。
それも、のう元唄は、
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(天神様の細道じゃ、
少し通して下さんせ、
御用のない人通しません、)
[#ここで字下げ終わり]
確か、こうでござりましょう。それを、
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(秋谷邸の細道じゃ、
誰方が見えても通しません、
通しません。)
[#ここで字下げ終わり]
とひとりでに唄います、の。まだそればかりではござりません。小児《こども》たちが日の暮方、そこらを遊びますのに、厭《いや》な真似を、まあ、どうでござりましょう。
てんでんが芋※[#「くさかんむり/更」、153−3]《ずいき》の葉を捩《も》ぎりまして、目の玉二つ、口一つ、穴を三つ開けたのを、ぬっぺりと、こう顔へ被《かぶ》ったものでござります。大《おおき》いのから小さいのから、その蒼白《あおじろ》い筋のある、細ら長い、狐とも狸とも、姑獲鳥《うぶめ》、とも異体の知れぬ、中にも虫喰のござります葉の汚点《しみ》は、癩《かったい》か、痘痕《あばた》の幽霊。面《つら》を並べて、ひょろひょろと蔭日向《かげひなた》、藪《やぶ》の前だの、谷戸口《やとぐち》
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