だの、山の根なんぞを練りながら今の唄を唄いますのが、三人と、五人ずつ、一組や二組ではござりませんで。
 悪戯《いたずら》が蒿《こう》じて、この節では、唐黍《とうもろこし》の毛の尻尾《しっぽ》を下げたり、あけびを口に啣《くわ》えたり、茄子提灯《なすびぢょうちん》で闇路《やみじ》を辿《たど》って、日が暮れるまでうろつきますわの。
 気になるのは小石を合せて、手ん手に四ツ竹を鳴らすように、カイカイカチカチと拍子を取って、唄が段々身に染みますに、皆《みんな》が家《うち》へ散際《ちりぎわ》には、一人がカチカチ石を鳴らして、
[#ここから4字下げ]
(今打つ鐘は、)
[#ここで字下げ終わり]
 と申しますと、
[#ここから4字下げ]
(四ツの鐘じゃ、)
[#ここで字下げ終わり]
 と一人がカチカチ、五ツ、六ツ、九ツ、八ツと数えまして……
[#ここから4字下げ]
(今打つ鐘は、
 七ツの鐘じゃ。)
[#ここで字下げ終わり]
 と云うのを合図に、
[#ここから4字下げ]
(そりゃ魔が魅《さ》すぞ!)
[#ここで字下げ終わり]
 と哄《どっ》と囃《はや》して、消えるように、残らず居なくなるのでござります
前へ 次へ
全189ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング