ゃとの。
(可《よ》かあねえだ。もの、理合《りあい》を言わねえ事にゃ、ハイ気が済みましねえ。お前様も明神様お知己《ちかづき》なら聞かっしゃい。老耆《おいぼれ》の手《てん》ぼう爺《じじい》に、若いものの酔漢《よいどれ》の介抱《やっかい》が何《あに》、出来べい。神様も分らねえ、こんな、くだま野郎を労ってやらっしゃる御慈悲い深い思召《おぼしめし》で、何でこれ、私等《わしら》婆様の中に、小児《こども》一人授けちゃくれさっしゃらぬ。それも可い、無い子だねなら断念《あきら》めべいが、提灯《ちょうちん》で火傷《やけど》をするのを、何で、黙って見てござった。私《わし》が手《てん》ぼうでせえなくば、おなじ車に結《ゆわ》えるちゅうて、こう、けんどんに、倒《さかしま》にゃ縛らねえだ。初対面のお前様見さっしゃる目に、えら俺《わし》が非道なようで、寝覚が悪い、)と顱巻《はちまき》を掉立《ふりた》てますと、のう。
(早く、お帰り、)と、継穂がないわの。
(いんにゃ、理を言わねえじゃ、)とまだ早や一概に捏《こ》ねようとしましたら……
(おいでよ、)と、お前様ね。
団扇《うちわ》で顔を隠さしったなり。背後《うしろ》
前へ
次へ
全189ページ中35ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング