を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》り、目を拭《ぬぐ》いいる客僧に立別れて、やがて静々《しずしず》――狗《いぬ》の顔した腰元が、ばたばたと前《さき》へ立ち、炎燃ゆ、と緋《ひ》のちらめく袖口で音なく開けた――雨戸に鏤《ちりば》む星の首途《かどいで》。十四日の月の有明に、片頬を見せた風采《とりなり》は、薄雲の下に朝顔の莟《つぼみ》の解けた風情して、うしろ髪、打揺《うちゆら》ぎ、一たび蚊帳を振返る。
「やあ、」
 と、蚊帳を払って、明が飜然《ひらり》と飛んで縋《すが》った。――
 袂を支える旅僧と、押揉《おしも》む二人の目の前《さき》へ、この時ずか、と顕《あら》われた偉人の姿、靄《もや》の中なる林のごとく、黄なる帷子《かたびら》、幕を蔽《おお》うて、廂《ひさし》へかけて仁王立《におうだち》、大音に、
「通るぞう。」
 と一喝した。
「はっ、」
 と云うと、奇異なのは、宵に宰八が一杯――汲《く》んで来て、――縁の端近《はしぢか》に置いた手桶《ておけ》が、ひょい、と倒斛斗《さかとんぼ》に引《ひっ》くりかえると、ざぶりと水を溢《こぼ》しながら、アノ手でつかつかと歩行《ある》き出した
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