た立姿。
 屋の棟|熟《じっ》と打仰いで、
「あれ、あれ、雲が乱るる。――花の中に、母君の胸が揺《ゆら》ぐ。おお、最惜《いとお》しの御子《おこ》に、乳飲まそうと思召すか。それとも、私が挙動《ふるまい》に、心騒ぎのせらるるか。客僧方《あなたがた》には見えまいが、地《じ》の底に棲《す》むものは、昼も星の光を仰ぐ。御姿かたちは、よく見えても、かしこは天宮、ここは地獄、言《ことば》といっては交わされない。
 美しき夢見るお方、」
 あれ、かしこに母君|在《まし》ますぞや。愛惜《あいじゃく》の一念のみは、魔界の塵《ちり》にも曇りはせねば、我が袖、鏡と御覧ぜよ。今、この瞳に宿れる雫《しずく》は、母君の御情《おんなさけ》の露を取次ぎ参らする、乳《ち》の滴《したたり》ぞ、と袂《たもと》を傾け、差寄せて、差俯《さしうつむ》き、はらはらと落涙して、
「まあ、稚児《おさなご》の昔にかえって、乳を求めて、……あれ、目を覚す……」
 さらば、さらば、御僧《おんそう》。この人夢の覚めぬ間に、と片手をついて、わかれの会釈。
 ト玄関から、庭前《にわさき》かけて、わやわやざわざわ、物音、人声。
 目を擦《こす》り、目
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