》に、一幅の中へ縮まった景色の時、本堂の背後《うしろ》、位牌堂《いはいどう》の暗い畳廊下から、一人水際立った妖艶《うつくし》いのが、突きはせず、手鞠を袖に抱いたまま、すらすらと出て、卵塔場を隔てた几帳窓《きちょうまど》の前を通る、と見ると、もう誰の蔭になったか人数《ひとかず》に紛れてしまった。それだ、この人は、いや、その時と寸分違わぬ――
と僧は心に――大方明も鐘撞堂から、この状《さま》を、今|視《なが》めている夢であろう。何かの拍子に、その鐘が鳴ると目が覚めよう、と思う内……
身動《みじろ》ぎに、この美女《たおやめ》の鬢《びん》の後《おく》れ毛、さらさらと頬に掛《かか》ると、その影やらん薄曇りに、目《ま》ぶちのあたりに寂しくなりぬ。
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(笄《こうがい》落し小枕《こまくら》落し……)
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と綾《あや》に取る、と根が揺らいで、さっと黒髪が肩に乱るる。
みだれし風采《とりなり》恥かしや、早これまでと思うらん。落した手毬を、女《め》の童《わらわ》の、拾って抱くのも顧みず、よろよろと立《たち》かかった、蚊帳に姿を引寄せられ、褄《つま》のこぼれ
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