に、鬼とも言わず、私を拝んでいなさいます。お美しい、お優しい、あの御顔を見ましては、恋の血汐《ちしお》は葉に染めても、秋のあ[#「あ」に傍点]の字も、明さんの名に憚《はばか》って声には出ませぬ。
 一言も交わさずに、ただ御顔を見たばかりでさえ、最愛《いとお》しさに覚悟も弱る。私は夫のござんす身体《からだ》。他《ひと》の妻でありながらも、母さんをお慕い遊ばす、そのお心の優しさが、身に染む時は、恋となり、不義となり、罪となる。
 実の産《うみ》の母御でさえ、一旦この世を去られし上は――幻にも姿を見せ、乳《ち》を呑ませたく添寝もしたい――我が児《こ》最惜《いとし》む心さえ、天上では恋となる、その忌憚《はばかり》で、御遠慮遊ばす。
 まして私は他人の事。
 余計な御苦労かけるのが御不便《ごふびん》さ。決して私は明さんに、在所《ありか》を知らせず隠れていたのに、つい膝許《ひざもと》の稚《おさな》いものが、粗相で手毬《てまり》を流したのが悪縁となりました。
 彼方《かなた》も私も身を苦しめ、心を傷《いた》めておりましたが、お生命《いのち》の危《あやう》いまでも、ここをおたち遊ばさぬゆえ、私わきへ参
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