んで手に縋《すが》り、胸に額を押当てて、母よ、姉よ、とおっしゃいますもの。
 どうして貴僧《あなた》、摺抜《すりぬ》けられよう、突離されよう、振切られましょう、私は引寄せます、抱緊《だきし》めます。
 と血を分けぬ、男と女は、天にも地にも許さぬ掟《おきて》。
 私たちには自由自在――どの道浮世に背いた身体《からだ》が、それでは外《ほか》に願いのある、私の願の邪魔になります。よしそれとても、棄身《すてみ》の私、ただ最惜《いとおし》さ、可愛さに、気の狂い、心の乱れるに随《まか》せましても、覚悟の上なら私一人、自分の身は厭《いと》いはしませぬ。
 厭わぬけれど……明さんがそうすると、私たちと同一《おなじ》ような身の上になりますもの……
 それはもう、この頃のお心では、明さんは本望らしい――本望らしい、」
 とさも懸想《けそう》したらしく胸を抱いたが、鼻筋白く打背いて、
「あれあれ御覧なさいまし。こう言う中《うち》にも、明さんの母《おっか》さんが、花の梢《こずえ》と見紛うばかり、雲間を漏れる高楼《たかどの》の、虹《にじ》の欄干《てすり》を乗出して、叱りも睨《にら》みも遊ばさず、児《こ》の可愛さ
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