萌黄《もえぎ》が迫って、その衣《きぬ》の色を薄く包んだ。
「この方の、母《おっか》さんのお知己《ちかづき》、明さんとも、お友達……」
と口を結んだが愁《うれい》を帯びた。
此方《こなた》は、じりじりと膝を向けて、
「ああ、貴女が、」
「あの、それに就きまして、貴僧《あなた》にお願いがございますが、どうぞお聞き下さいまし。」
とまた蚊帳越に打視《うちなが》め、
「お最愛《いと》しい、沢山《たんと》お窶《やつ》れ遊ばした。罪も報《むくい》もない方が、こんなに艱難辛苦《かんなんしんく》して、命に懸けても唄が聞きたいとおっしゃるのも、母《おっか》さんの恋しさゆえ。
その唄を聞こう聞こうと、お思いなさいます心から、この頃では身も世も忘れて、まあ、私を懐《なつか》しがって、迷って恋におなりなすった。
その唄は稚《おさな》い時、この方の母さんから、口移しに教《おそ》わって、私は今も、覚えている。
こうまで、お憧《こが》れなさるもの、ちょっと一目お目にかかって、お聞かせ申《もおし》とうござんすけれど、今顔をお見せ申しますと、お慕いなさいます御心から、前後も忘れて夢見るように、袖に搦《から》
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