ら》び、眦《まなじり》に紫の隈《くま》暗く、頬骨のこけた頤《おとがい》蒼味がかり、浅葱に窩《くぼ》んだ唇裂けて、鉄漿《かね》着けた口、柘榴《ざくろ》の舌、耳の根には針のごとき鋭《と》き牙《きば》を噛《か》んでいたのである。
四十三
「おお、自分の顔を隠したさ。貴僧《あなた》を威《おど》す心ではない、戸外《そと》へ出ます支度のまま……まあ、お恥かしい。」
と、横へ取ったは白鬼《はっき》の面。端麗にして威厳あり、眉美しく、目の優しき、その顔《かんばせ》を差俯向《さしうつむ》け、しとやかに手を支《つ》いた。
「は、は、はじめまして、」
と、しどろになって会釈すると、面《おもて》を上げた寂《さみ》しい頬に、唇|紅《あこ》う莞爾《にっこり》して、
「前刻《さっき》、憚《はばかり》へいらっしゃいます、廊下でお目に懸《かか》りましたよ。」
客僧も、今はなかなかに胴|据《すわ》りぬ。
「貴女《あなた》はどなたでございます。」
と尋ねたが、その時はほぼその誰なるかを知っているような気がしたのである。
美女《たおやめ》は褄《つま》を深う居直って、蚊帳を透《すか》して打傾く。
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