る。さまでは、とうけて恐る恐る干すと、ややあって、客僧、御身は苦悶《くもん》し、煩乱《はんらん》し、七転八倒して黒き血のかたまりを吐くじゃ。」
 客僧は色|真蒼《まっさお》である。
「驚いて少年が介抱する。が、もう叶《かな》わぬ、臨終という時、
(われは僧なり、身を殺して仁をなし得れば無上の本懐、君その素志を他に求めて、疾《と》くこの恐しき魔所を遁《のが》れられよ。)
 と遺言する。これぞ、われらの誂《あつらえ》じゃ。
 蚊帳の中で、少年の魘《うな》されたは、この夢を見た時よ、なあ。
 これならば立退《たちの》くであろう、と思うと、ああ、埒《らち》あかぬ。客僧、御身が仮に落入るのを見る、と涙を流して、共に死のうと決心した。
 葛籠《つづら》に秘め置く、守刀《まもりがたな》をキラリと引抜くまで、襖《ふすま》の蔭から見定めて、
(ああ、しばらく、)
 と留めたは、さて、殺しては相済まぬ。
 これによって、われら守護する逗留客は、御自分の方から、この邸を開いて、もはや余所《よそ》へ立退《の》くじゃが。
 その以前、直々《じきじき》に貴面を得て、客僧に申《もおし》談じたい儀があると謂《い》わる
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