およそ天下に、夜《よ》を一目も寝ぬはあっても、瞬《またたき》をせぬ人間は決してあるまい。悪左衛門をはじめ夥間《なかま》一統、すなわちその人間の瞬く間を世界とする――瞬くという一秒時には、日輪の光によって、御身《おみ》等が顔容《かおかたち》、衣服の一切《すべて》、睫毛《まつげ》までも写し取らせて、御身等その生命の終る後、幾百年にも活《い》けるがごとく伝えらるる長い時間のあるを知るか。石と樹と相打って、火をほとばしらすも瞬く間、またその消ゆるも瞬く間、銃丸の人を貫くも瞬く間だ。
 すべて一たびただ一|人《にん》の瞬きする間に、水も流れ、風も吹く、木《こ》の葉も青し、日も赤い。天下に何一つ消え失《う》するものは無うして、ただその瞬間、その瞬く者にのみ消え失すると知らば、我等が世にあることを怪《あやし》むまい。」
 と悠然として打頷《うちうなず》き、
「そこでじゃ、客僧。
 たといその者の、自から招く禍《わざわい》とは言え、月のたちまち雲に隠れて、世の暗くなるは怪《あやし》まず、行燈《あんどう》の火の不意に消ゆるに喚《わめ》き、天に星の飛ぶを訝《いぶか》らず、地に瓜《うり》の躍るに絶叫する
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