呪《のろ》うものか。」
「いや、人間をよけて通るものじゃ。清き光天にあり、夜鴉《よがらす》の羽《は》うらも輝き、瀬の鮎《あゆ》の鱗《うろこ》も光る。隈《くま》なき月を見るにさえ、捨小舟《すておぶね》の中にもせず、峰の堂の縁でもせぬ。夜半人跡の絶えたる処は、かえって茅屋《かやや》の屋根ではないか。
 しかるを、わざと人間どもが、迎え見て、損《そこな》わるるは自業自得じゃ。」

       四十一

「真日中《まひなか》に天下の往来を通る時も、人が来れば路を避ける。出会《いであ》えば傍《わき》へ外れ、遣過《やりす》ごして背後《うしろ》を参る。が、しばしば見返る者あれば、煩わしさに隠れ終《おお》せぬ、見て驚くは其奴《そやつ》の罪じゃ。
 いかに客僧、まだ拙者《それがし》を疑わるるか。」
 と莞爾《かんじ》として、客僧の坊主頭を、やがて天井から瞰下《みおろ》しつつ、
「かくてもなお、我等がこの宇宙の間に罷在《まかりあ》るを怪《あやし》まるるか。うむ、疑いに※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》られたな。※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》いたその瞳も、直ちに瞬く。
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