な晩、中空を越す通魔《とおりま》が、魔王に、はたと捧ぐる、関所の通証券《とおりてがた》であろうも知れぬ。膝を払って衝《つ》と立って、木の葉のはらはらと揺れるに連れて、ぶるぶると渠《かれ》は身震いした。
「えへん!」
 と揉潰《もみつぶ》されたような掠《かす》れた咳《せき》して、何かに目を転じて、心を移そうとしたが、風呂敷包の、御経を取出す間も遅し。さすがに心着いたのは、障子に四五枚、かりそめに貼《は》った半紙である。
 これはここへ来てからの、心覚えの童謡《わらわうた》を、明が書留めて朝夕《ちょうせき》に且つ吟じ且つ詠《なが》むるものだ、と宵に聞いた。
 立ったままに寄って見ると、真先《まっさき》に目に着いたのが濃い墨で、
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落葉一枚、
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 僧は更に悚然《ぞっ》とした。
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落葉一枚、
二枚、三枚、
十《とお》とかさねて、
落葉の数も、
ついて落いた君の年、
      君の年――
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 振返ると、まだそこに、掃掛けて廃《よ》したように、蒼《あお》きが黒く散々《ちりぢり》である。
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