まの裾[#「裾」は底本では「据」]あたり宙を歩行《ある》いて、血だらけだ、と云う苦虫が馬の這身《はいみ》、竹槍が後《しりえ》を圧《おさ》えて、暗がりを蟹が通る。……広縁をこの体《てい》は、さてさて尋常事《ただごと》ではない。
 やがて座敷で介抱して、ようよう正気づくと、仁右衛門は四辺《あたり》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》し、あまたたび口籠《くちごも》りながら、相済みましねえ、お客様、御出家、宰八|此方《こなた》にはなおの事、四十年来の知己《ちかづき》が、余り気心を知らんようで、面目もない次第じゃ。
 御主人鶴谷様のこの別宅、近頃の怪しさ不思議さ。余りの事に、これは一《ひと》分別ある処と、三日|二夜《ふたよる》、口も利かずにまじまじと勘考した。はて巧《たく》んだり!てっきりこいつ大詐欺《おおかたり》に極まった。汝等《うぬら》が謀《はか》って、見事に妖物邸《ばけものやしき》にしおおせる。棄て置けば狐狸《こり》の棲処《すみか》、さもないまでも乞食の宿、焚火《たきび》の火|沙汰《ざた》も不用心、給金出しても人は住まず、持余しものになるのを見済まし、立腐れの柱を根こぎに
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