につれて、一所に横向きになって歩行《ある》き出しました。あとへぞろぞろ大勢|小児《こども》が……国では珍らしい獣《けもの》だからでしょう。
右の方へかくれたから、角へ出て見ようと、急足《いそぎあし》に出よう、とすると、馴《な》れない跛《びっこ》ですから、腕へ台についた杖を忘れて、躓《つまず》いて、のめったので、生爪《なまづめ》をはがしたのです。
しばらく立てませんでした。
かれこれして、出て見ると、もうどこへ行ったか影も形もない。
その後、旅行をして諸国を歩行《ある》くのに、越前の木《こ》の芽峠の麓《ふもと》で見かけた、炭を背負《しょ》った女だの、碓氷《うすい》を越す時汽車の窓からちらりと見ました、隧道《トンネル》を出て、衝《つ》と隧道を入る間の茶店に、うしろ向きの女《むすめ》だの、都《みやこ》では矢のように行過ぎる馬車の中などに、それか、と思うのは幾たびも見かけたんですが……その熊の時のほど、印象のよく明瞭に今まで残ってるのは無いのです。
内へ帰って、
[#ここから4字下げ]
(美しき君の姿は、
熊に取られた。
町の角で、町の角で――
跛ひきひき追えど及ばぬ。)
[#
前へ
次へ
全189ページ中126ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング