ら、いくらか手懸りもあるし、何の不思議もないのですが、俗に申します、神がくしに逢ったんで、叔母はじめ固くそう信じております。
 名は菖蒲《あやめ》と言いました。
 一体その娘の家は、母娘《おやこ》二人、どっちの乳母か、媼《ばあ》さんが一人、と母子《おやこ》だけのしもた屋で、しかし立派な住居《すまい》でした。その母親《おふくろ》というのは、私は小児《こども》心に、ただ歯を染めていたのと、鼻筋の通った、こう面長な、そして帯の結目《むすびめ》を長く、下襲《したがさね》か、蹴出《けだ》しか、褄《つま》をぞろりと着崩して、日の暮方には、時々薄暗い門《かど》に立って、町から見えます、山の方を視《なが》めては悄然《しょんぼり》彳《たたず》んでいたのだけ幽《かすか》に覚えているんですが、人の妾《めかけ》だとも云うし、本妻だとも云う、どこかの藩候の落胤《おとしだね》だとも云って、ちっとも素性が分りません。
 娘は、別に異《かわ》ったこともありませんが、容色《きりょう》は三人の中《うち》で一番|佳《よ》かった――そう思うと、今でも目前《めさき》に見えますが。
 その娘です、余所《よそ》へは遊びに来ましたけ
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