娘たちと、毬も突き、追羽子《おいはご》もした事を現《うつつ》のように思出しましたから、それを捜せば、きっと誰か知っているだろう、と気の着いた夜半《よなか》には、むっくりと起きて、嬉しさに雀躍《こおどり》をしたんですが、貴僧《あなた》、その中《うち》の一人は、まだ母の存命の内に、雛《ひな》祭の夜なくなりました。それは私も知っている――
 一人は行方が知れない、と言います……
 やっと一人、これは、県の学校の校長さんの処へ縁づいているという。まず可《よ》し、と早速訪ねて参りましたが、町はずれの侍町、小流《こながれ》があって板塀続きの、邸ごとに、むかし植えた紅梅が沢山あります。まだその古樹《ふるき》がちらほら残って、真盛《まっさか》りの、朧月夜《おぼろづきよ》の事でした。
 今|貴僧《あなた》がここへいらっしゃる玄関前で、紫雲英《げんげ》の草を潜《くぐ》る兎を見たとおっしゃいました、」
「いや、肝心のお話の中《うち》へ、お交ぜ下すっては困ります。そうは見えましたものの、まさかかような処へ。あるいはその……猫であったかも知れません。」
「背後《うしろ》が直ぐ山ですから、ちょいちょい見えますそう
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