それかと思うのは更に分らぬ。
「して、その唄は、貴下《あなた》お聞きになったことがございましょうか。」
「小児《こども》の時に、亡くなった母親が唄いましたことを、物心覚えた最後の記憶に留めただけで、どういうのか、その文句を忘れたんです。
年を取るに従うて、まるで貴僧《あなた》、物語で見る切ない恋のように、その声、その唄が聞きたくッてなりません。
東京のある学校を卒業《で》ますのを待《まち》かねて、故郷へ帰って、心当りの人に尋ねましたが、誰のを聞いても、どんなに尋ねても、それと思うのが分らんのです。
第一、母親の姉ですが、私の学資の世話をしてくれます、叔母がそれを知りません。
ト夢のように心着いたのは、同一《おなじ》町に三人あった、同一《おなじ》年ごろの娘です。
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(産んだその子が男の児《こ》なら、
京へ上《の》ぼせて狂言させて、
寺へ上ぼせて手習《てならい》させて、
寺の和尚が、
道楽和尚で、
高い縁から突落されて、
笄《こうがい》落し
小枕《こまくら》落し、)
[#ここで字下げ終わり]
と、よく私を遊ばせながら、母も少《わか》かった、その
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