なごしゅ》でありそうに思われました。
 ト台所の方を、どうやら嫋娜《すらり》とした、脊の高い御婦人が、黄昏《たそがれ》に忙しい裾捌《すそさば》きで通られたような、ものの気勢《けはい》もございます。
 何となく賑《にぎや》かな様子が、七輪に、晩のお菜《かず》でもふつふつ煮えていようという、豆腐屋さ――ん、と町方ならば呼ぶ声のしそうな様子で。
 さては婆さんに試されたか、と一旦《いったん》は存じましたが、こう笠を傾けて遠くから覗込《のぞきこ》みました、勝手口の戸からかけて、棟へ、高く烏瓜《からすうり》の一杯にからんだ工合《ぐあい》が、何様、何ヶ月も閉切《しめきり》らしい。
 ござったかな、と思いながら、擽《くすぐ》ったいような御門内の草を、密《そっ》と蹈《ふ》んで入りますと、春さきはさぞ綺麗《きれい》でございましょう。一面に紫雲英《げんげ》が生えた、その葉の中へ伝わって、断々《きれぎれ》ながら、一条《ひとすじ》、蒼《あお》ずんだ明るい色のものが、這《は》ったように浮いたように落ちています。上へさした森の枝を、月が漏る影に相違は無さそうなが、何となく婦人の黒髪、その、丈長く、足許《あしもと》
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