ら、お見合せなさいまし。逆《さから》うと悪いんですから。」
二十八
「なかなか、逆らいますどころではございません、座敷好みなんぞして可《い》いものでございますか。
あの襖《ふすま》を振向いて熟《じっ》と視《み》ろ、とおっしゃったって、容易にゃそちらも向けません次第で、御覧の通り、早や固くなっております。
お話につけて申しますが、実は手前もこの黒門を潜《くぐ》りました時は、草に支《つか》えて、しばらく足が出ませんでございました。
それと申すが、まず庭口と思う処で、キリキリトーンと、余程その大轆轤《おおろくろ》の、刎釣瓶《はねつるべ》を汲上《くみあ》げますような音がいたす。
もっとも曰《いわ》くづきの邸《やしき》ながら、貴下《あなた》お一方はまずともかくもいらっしゃる。人が住めば水も要ろうで、何も釣瓶の音が不思議と云うでは、道理上、こりゃ無いのでありまするが、婆さんに聞きました心積《こころづも》り、学生の方が自炊をしてお在《いで》と云えば、土瓶か徳利《とっくり》に汲んで事は足りる、と何となく思ってでもおりましたせいか、そのどうも水を汲む音が、馴《な》れた女中衆《お
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