だ》れて乳《ちゝ》も見《み》える。其《それ》を片手《かたて》で祕《かく》したけれども、足《あし》のあたりを震《ふる》はすと、あゝ、と云《い》つて其《そ》の手《て》も兩方《りやうはう》、空《くう》を掴《つか》むと裙《すそ》を上《あ》げて、弓形《ゆみなり》に身《み》を反《そ》らして、掻卷《かいまき》を蹴《け》て、轉《ころ》がるやうに衾《ふすま》を拔《ぬ》けた。……
 私《わたし》は飛出《とびだ》した……
 壇《だん》を落《お》ちるやうに下《お》りた時《とき》、黒《くろ》い狐格子《きつねがうし》を背後《うしろ》にして、婦《をんな》は斜違《はすつかひ》に其處《そこ》に立《た》つたが、呀《あ》、足許《あしもと》に、早《は》やあの毛《け》むくぢやらの三俵法師《さんだらぼふし》だ。
 白《しろ》い踵《くびす》を揚《あ》げました、階段《かいだん》を辷《すべ》り下《お》りる、と、後《あと》から、ころ/\と轉《ころ》げて附着《くツつ》く。さあ、それからは、宛然《さながら》人魂《ひとだま》の憑《つき》ものがしたやうに、毛《け》が赫《かつ》と赤《あか》く成《な》つて、草《くさ》の中《なか》を彼方《あつち》へ、
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