神佛《しんぶつ》から授《さづ》かつたものと思《おも》へば、屹《きつ》と病氣《びやうき》が治《なほ》りませう。私《わたし》も幸福《かうふく》なんです。
丁度《ちやうど》私《わたし》の居《ゐ》た汀《みぎは》に、朽木《くちき》のやうに成《な》つて、沼《ぬま》に沈《しづ》んで、裂目《さけめ》に燕子花《かきつばた》の影《かげ》が映《さ》し、破《やぶ》れた底《そこ》を中空《なかぞら》の雲《くも》の往來《ゆきき》する小舟《こぶね》の形《かたち》が見《み》えました。
其《それ》を見棄《みす》てて、御堂《おだう》に向《むか》つて起《た》ちました。
談話《はなし》の要領《えうりやう》をお急《いそ》ぎでせう。
早《はや》く申《まを》しませう。……其《そ》の狐格子《きつねがうし》を開《あ》けますとね、何《ど》うです……
(まあ、此《これ》は珍《めづら》しい。)
几帳《きちやう》とも、垂幕《さげまく》とも言《い》ひたいのに、然《さ》うではない、萌黄《もえぎ》と青《あを》と段染《だんだら》に成《な》つた綸子《りんず》か何《なん》ぞ、唐繪《からゑ》の浮模樣《うきもやう》を織込《おりこ》んだのが窓帷《カアテ
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