》を枕《まくら》に横倒《よこだふ》しに成《な》つたが疾《はや》いか、起《おき》るが否《いな》や、三|人《にん》ともに手鞠《てまり》のやうに衝《つ》と遁《に》げた。が、遁《に》げるのが、其《そ》の靄《もや》を踏《ふ》むのです。鈍《どん》な、はずみの無《な》い、崩《くづ》れる綿《わた》を踏越《ふみこ》し踏越《ふみこ》しするやうに、褄《つま》が縺《もつ》れる、裳《もすそ》が亂《みだ》れる……其《それ》が、やゝ少時《しばらく》の間《あひだ》見《み》えました。
其《そ》の後《あと》から、茶店《ちやみせ》の婆《ばあ》さんが手《て》を泳《およ》がせて、此《これ》も走《はし》る……
一體《いつたい》あの邊《へん》には、自動車《じどうしや》か何《なに》かで、美人《びじん》が一日《いちにち》がけと云《い》ふ遊山宿《ゆさんやど》、乃至《ないし》、温泉《をんせん》のやうなものでも有《あ》るのか、何《ど》うか、其《そ》の後《ご》まだ尋《たづ》ねて見《み》ません。其《それ》が有《あ》ればですが、それにした處《ところ》で、近所《きんじよ》の遊山宿《ゆさんやど》へ來《き》て居《ゐ》たのが、此《こ》の沼《ぬま》へ來
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