沼《ふるぬま》ですもの。丁《ちやう》ど、其《そ》の日《ひ》の空模樣《そらもやう》、雲《くも》と同一《おなじ》に淀《どんよ》りとして、雲《くも》の動《うご》く方《はう》へ、一所《いつしよ》に動《うご》いて、時々《とき/″\》、てら/\と天《てん》に薄日《うすび》が映《さ》すと、其《そ》の光《ひかり》を受《う》けて、晃々《きら/\》と光《ひか》るのが、沼《ぬま》の面《おもて》に眼《まなこ》があつて、薄目《うすめ》に白《しろ》く人《ひと》を窺《うかゞ》ふやうでした。
此《これ》では、其《そ》の沼《ぬま》が、何《なん》だか不氣味《ぶきみ》なやうですが、何《なに》、一寸《ちよつと》の間《ま》の事《こと》で、――四|時《じ》下《さが》り、五|時《じ》前《まへ》と云《い》ふ時刻《じこく》――暑《あつ》い日《ひ》で、大層《たいそう》疲《つか》れて、汀《みぎは》にぐつたりと成《な》つて一息《ひといき》吐《つ》いて居《ゐ》る中《うち》には、雲《くも》が、なだらかに流《なが》れて、薄《うす》いけれども平《たひら》に日《ひ》を包《つゝ》むと、沼《ぬま》の水《みづ》は靜《しづか》に成《な》つて、そして、少《す
前へ
次へ
全38ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング