ゑ》が屆《とゞ》くほどは小《ちひ》さくない。それぢや餘程《よほど》廣《ひろ》いのか、と云《い》ふのに、又《また》然《さ》うでもない、ものの十四五|分《ふん》も歩行《ある》いたら、容易《たやす》く一周《ひとまは》り出來《でき》さうなんです。但《たゞ》し十四五|分《ふん》で一周《ひとまはり》と云《い》つて、すぐに思《おも》ふほど、狹《せま》いのでもないのです。
 と、恁《か》う言《い》ひます内《うち》にも、其《そ》の沼《ぬま》が伸《の》びたり縮《ちゞ》んだり、すぼまつたり、擴《ひろ》がつたり、動《うご》いて居《ゐ》るやうでせう。――居《ゐ》ますか、結構《けつこう》です――其《そ》のつもりでお聞《き》き下《くだ》さい。
 一體《いつたい》、水《みづ》と云《い》ふものは、一雫《ひとしづく》の中《なか》にも河童《かつぱ》が一個《ひとつ》居《ゐ》て住《す》むと云《い》ふ國《くに》が有《あ》りますくらゐ、氣心《きごころ》の知《し》れないものです。分《わ》けて底《そこ》澄《ず》んで少《すこ》し白味《しろみ》を帶《お》びて、とろ/\と然《しか》も岸《きし》とすれ/″\に滿々《まん/\》と湛《たゝ》へた古
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