うすゐ》ぐるみ庭《には》の池《いけ》にして、筑波《つくば》の影《かげ》を矜《ほこ》りとする、豪農《がうのう》、大百姓《おほびやくしやう》などがあるのです。
唯今《たゞいま》お話《はなし》をする、……私《わたし》が出會《であ》ひましたのは、何《ど》うも庭《には》に造《つく》つた大池《おほいけ》で有《あ》つたらしい。尤《もつと》も、居周圍《ゐまはり》に柱《はしら》の跡《あと》らしい礎《いしずゑ》も見當《みあた》りません。が、其《それ》とても埋《うも》れたのかも知《し》れません。一面《いちめん》に草《くさ》が茂《しげ》つて、曠野《あらの》と云《い》つた場所《ばしよ》で、何故《なぜ》に一度《いちど》は人家《じんか》の庭《には》だつたか、と思《おも》はれたと云《い》ふのに、其《そ》の沼《ぬま》の眞中《まんなか》に拵《こしら》へたやうな中島《なかじま》の洲《す》が一《ひと》つ有《あ》つたからです。
で、此《こ》の沼《ぬま》は、話《はなし》を聞《き》いて、お考《かんが》へに成《な》るほど大《おほき》なものではないのです。然《さ》うかと云《い》つて、向《むか》う岸《ぎし》とさし向《むか》つて聲《こ
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