》が汎濫《はんらん》して、田《た》に、畠《はたけ》に、村里《むらざと》に、其《そ》の水《みづ》が引殘《ひきのこ》つて、月《つき》を經《へ》、年《とし》を過《す》ぎても涸《か》れないで、其《そ》のまゝ溜水《たまりみづ》に成《な》つたのがあります。……
小《ちひ》さなのは、河骨《かうほね》の點々《ぽつ/\》黄色《きいろ》に咲《さ》いた花《はな》の中《なか》を、小兒《こども》が徒《いたづら》に猫《ねこ》を乘《の》せて盥《たらひ》を漕《こ》いで居《ゐ》る。大《おほ》きなのは汀《みぎは》の蘆《あし》を積《つ》んだ船《ふね》が、棹《さを》さして波《なみ》を分《わ》けるのがある。千葉《ちば》、埼玉《さいたま》、あの大河《たいが》の流域《りうゐき》を辿《たど》る旅人《たびびと》は、時々《とき/″\》、否《いや》、毎日《まいにち》一《ひと》ツ二《ふた》ツは度々《たび/″\》此《こ》の水《みづ》に出會《でつくは》します。此《これ》を利根《とね》の忘《わす》れ沼《ぬま》、忘《わす》れ水《みづ》と呼《よ》んで居《ゐ》る。
中《なか》には又《また》、あの流《ながれ》を邸内《ていない》へ引《ひ》いて、用水《よ
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