》のやうに、魅《つま》まれて路《みち》を迷《まよ》つたらうか。』
『然《さ》うでもござりやすめえ、奥様《おくさま》は、其《そ》のお前様《めえさま》を捜《さが》し歩行《ある》いて、其《それ》で未《ま》だ、お帰《かへ》りが無《な》いのでござりやせうで、天狗様《てんぐさま》も二人一所《ふたりいつしよ》に攫《さら》はつしやることは滅多《めつた》にねえ事《こと》でござります。今《いま》にお帰《かへ》りに成《な》るでござりやしやう。宿《やど》でも心配《しんぱい》をして居《を》りますで、夜一夜《よつぴて》寐《ね》ねえで捜《さが》しますで、お前様《めえさま》は、まあ、休《やす》まつしやりましたが可《よ》うござります。』
気《き》が気《き》では無《な》い。一所《いつしよ》に捜《さが》しに出《で》かけやうと言《い》ふと、いや/\山坂《やまさか》不案内《ふあんない》な客人《きやくじん》が、暗《やみ》の夜路《よみち》ぢや、崖《がけ》だ、谷《たに》だで、却《かへ》つて足手絡《あしてまと》ひに成《な》る。……案内者《あんないしや》に雇《やと》はれるものが、何《なに》も知《し》らない前《まへ》に道案内《みちあんな
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