い》を為《し》たと言《い》ふも何《なに》かの縁《えん》と思《おも》ふ。人一倍《ひといちばい》精出《せいだ》して捜《さが》さうから静《しづ》かに休《やす》め、と頼母《たのも》しく言《い》つて、すぐに又《また》下階《した》へ下《お》りた。
一時《ひとしきり》騒々《さう/″\》しかつたのが、寂寞《ひつそり》ばつたりして平時《いつも》より余計《よけい》に寂《さび》しく夜《よ》が更《ふ》ける……さあ、一分《いつぷん》、一秒《いちびやう》、血《ち》が冷《ひ》え、骨《ほね》が刻《きざ》まれる思《おも》ひ。時《とき》が経《た》てば経《た》つだけ、それだけお浦《うら》の帰《かへ》る望《のぞ》みが無《な》くなると言《い》つた勘定《かんぢやう》。九時《くじ》が十時《じふじ》、十一時《じふいちじ》を過《す》ぎても音沙汰《おとざた》が無《な》い。時々《とき/″\》、廊下《らうか》を往通《ゆきかよ》ふ女中《ぢよちゆう》が、通《とほ》りすがりに、
『何《ど》う遊《あそ》ばしたのでございませう、』
『うむ、』
『御心配《ごしんぱい》でございます。』
『あゝ、』
――返答《へんたふ》が出来《でき》ないで、溜息《ため
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