》ど血《ち》の色《いろ》のない顔《かほ》を真向《まむき》に、ぱつちりとした二重瞼《ふたへまぶた》の黒目勝《くろめがち》なのを一杯《いつぱい》に※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》いて、瞬《またゝき》もしないまで。而《そ》して男《をとこ》の耳《みゝ》と、其《そ》の鬢《びん》と、すれ/\に顔《かほ》を並《なら》べた、一方《いつぱう》が小造《こづくり》な方《はう》ではないから、婦《をんな》の背《せ》が随分《ずいぶん》高《たか》い。
 然《さ》うかと思《おも》へば、帯《おび》から下《した》は、げつそりと風《ふう》が薄《うす》く、裙《すそ》は緊《しま》つたが、ふうわりとして力《ちから》が入《はい》らぬ。踵《かゝと》が浮《う》いて、恁《か》う、上《うへ》へ担《かつ》ぎ上《あ》げられて居《ゐ》さうな様子《やうす》。
 二人《ふたり》とも、それで、やがて膝《ひざ》の上《うへ》あたりまで、乱《みだ》れかゝつた枯蘆《かれあし》で蔽《おほ》はれた上《うへ》を、又《また》其《そ》の下《した》を這《は》ふ霞《かすみ》が隠《かく》す。
 最《もつと》も路《みち》のない処《ところ》を辿《たど》るので
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